能楽夜ばなしⅡ 2025 1月19日更新 忠度

能楽夜ばなしⅡ

公演案内ページを作りました。シテ以外にも全てはありませんが、感想などコメントします。随時削除更新して過去コメントはアーカイブの方に移動します。

1月19日更新
鎌倉能舞台さんでの忠度が昨日終わりました。ご来場ありがとうございました。
今週は、数日前に練馬区の学校公演で敦盛も勤めましたので、一ノ谷の戦いをまとめて2番勤めた珍らしい週でした。敦盛は16歳 忠度は40歳過ぎてますから、自ずと感じが違うのですが、両曲共ただの戰物語でなく敦盛は笛の名手、忠度は和歌の歌人としての雅な風情が曲に奥行きを与えています。
その違いも肌で感じられました。

忠度の謡は、節付けの作曲に特徴があり、サシ謡いの中に、いわゆる弱吟強吟が織り混ざっていたり、囃子事のあしらいも面白い変化をちょこっと入れていたりと、楽曲が面白く出来ています。
勤めてみると忠度は、シテはもちろんですが、後見、囃子、地謡共に技量を要する名曲だと実感します。例により反省は多々ありますが、ご覧いただき感謝申し上げます。
今回は鎌倉能舞台さんの面装束をお借りして勤めました。(写真は舞台写真の切り抜きです)

この日は、一部の中森師の吉野静と忠度、共に満員御礼の盛況で、午前午後共に狂言でご出演の善竹十郎先生が、とにかくお元気で、吉野静の間もされて、三番出演の大活躍。
かく元気でありたいものだと大いに刺激を受けました。

昨日は埼玉や遠く秋田からも応援に来てくれたお弟子さんたちが、近くのお洒落な古民家カフェでランチをして鎌倉を楽しんでいただけたようで、帰りは遠足のように一緒に帰ってきました。本当に目の前で舞台が見れて面白かったとご感想をいただきました。お疲れ様でした。

今年は、4月29日(祝日)にも熊野(ゆや)という、春爛漫の名曲のシテで、出演させていただきます。これ熊野松風は米の飯と言われるほど、何度見ても美味しい名曲と古来言われてきた作品。今回は、読継ぎ墨継ぎ村雨留と、三つの小書がついておりますので、また少し細かな演出の変化があります。
熊野は、中入りがないので演者は実は結構大変な大曲なんですよね。鎌倉さんで、熊野の上演って、いつ以来かしらということなのでどんな風になるのか楽しみです。しっかり身体作って臨みたいと思います。チケット発売してるようなので、良い席はどうぞお早めに鎌倉さんにお申し込み下さいませ。



1月13日更新
九皐会矢来能楽堂の定例公演もスタートしました。
あらためまして本年もよろしくお願いいたします。
昨日は、坂君の翁の披き(初演)で新春を寿ぎました。
この曲は、本当に別格の曲目で、神事でもあり、祈りでもあります。
今年一年が平穏でありますよう人々を代表して神下ろしをして舞う重責です。
ここ数年九皐会では、門下の翁が続いていますが、後輩の皆も30年40年以上(子方時代を入れると50年超える人も)のキャリアになり、頭に雪がちらつく年になり、感慨深いものがあります。昨日は私も楽屋にいて手伝いをしながら一年の無事を願いました。

2部は、私は西王母の主後見でした。こちらはいつも通りでした。併せてご来場感謝申します。

さて、昨年来より宣伝しておりました鎌倉能舞台さんでの忠度
いよいよ今週、シテを勤めます。

当日中森貫太さんの解説があるので、私からは一言だけおはなしを。(ネタバレありますので、観能後に読んでも良いかも)


この曲の題材は、高校生の古文にも出てくる平家物語の「忠度都落」

そして「忠度最後」


なのでここはサッとYouTubeなので、受験生向けの平家物語古文解説動画でさらっておくと、より楽しめます。


忠度は修羅物ジャンルだけど、修羅の苦しみはテーマではなくて、和歌をこよなく愛した忠度の歌に対する想いが主眼の、風雅な能になっています。


忠度の和歌の思いについては原作の平家物語「忠度都落」の方が詳しく描かれてますが、能作者(世阿弥)は、平家物語の読者前提に作っているだろうと思います。


能らしいと思うのは、舞台には全く大道具、小道具のセットとしても現れない桜。


ストーリー

今の神戸須磨区一の谷あたりを通りかかった西国行脚の旅の僧。

この人は、平忠度の和歌の師匠、千載集を編纂した藤原俊成 (しゅんぜい、としなり)の身内の人。俊成が亡くなり出家して西国に旅に出て、須磨にやってくる。

須磨といえば、能では、松風の行平(わくらはに問う人あらば須磨の浦に 藻塩たれつつ侘ぶと答えよ 古今集)や須磨源氏の光源氏が流された都から見れば鄙びた寂しいところです。そしてかつて源平の戦では、一の谷の戦いの主戦場となり、多くの武者が散ってゆきました。


季節は春で、山陰に桜が咲き、その一つの桜の木の下には、一の谷の戦いで戦死した忠度の塚もある。

この桜の木の下で、ストーリーが進行するのだけど、能では、この桜の木は観客の想像力に委ねて舞台には花の作り物を出さない。


そこがこの曲のポイントでもあるのかな。


そこへ、山人と思しき老人が通りかかる。

この老人、潮汲みの仕事をしているが、塩を焼くために山に薪をとりに通っている。そして、その通い道に忠度の塚があるので、手向の花を手向ける。

ここでも手向の花は持たない(通常は持たずに木の葉で演じる)


現代劇ならば、大きな桜の木のセット、そして主人公は桜の小枝を持って現れるだろうけど、逆に花は持たない。


旅僧に一夜の宿を乞われた老人は、この桜の木の下ほどの宿はあるまいと言う。そして。


行き暮れて 木の下陰を宿とせば

花や今宵の あるじならまし


と、忠度の和歌を詠う。(忠度最後に描かれている、岡部六弥太が討ち取った武者の死骸にあった短冊付きの矢に書かれた和歌。それで相手が忠度だとわかって、皆、涙で袖を濡らした)


この老人こそ、忠度の霊が化身した姿で、俊成の身内の僧侶が訪れたので老人の姿となって現れたのだった。


そして、この桜の木の下に寝て、夢の告げを待てと言って消え失せる。


後半は、旅僧の夢に、ありし日の公達姿の忠度が現れ、死後に俊成によって千載集に選ばれたが、戦に負け、朝敵となり作者の名前は消されて、読み人知らずなった事が1番の妄執だと語り、旅僧に、俊成の息子の定家に名前を入れてくれと頼んで欲しいと懇願する。


ささなみや 志賀の都はあれにしを

昔ながらの 山桜かな

(読み人知らずとされた千載集に選ばれたこの歌は、この能では直接歌われない。)


やがて、忠度の都落ちの下り(俊成に和歌を託しに戻った場面。わずかですが出てきます)

そして忠度最後に描かれた、自らの死に様、岡部六弥太忠澄との戦いの様を舞って、旅僧に回向を頼んで、桜の花の元に消え帰る。


果たしてそれは、旅僧の見た夢だったのか、幻だったのか。

あとには桜の木だけが残る。


という風情豊かな能ですけど、実際の花は最後まで小道具として出てこないので、花はお客様の心の中に見てね。というおはなし。


能は想像、空想の芸術だといわれるけど、この曲も描かれない行間・余白が多い。

それがこの曲の魅力でもあり、自分なりに想像してご覧いただけたらと思います。


稽古をしていると、自然と桜の木が見えてくるわけですけど、そういう目に見えない物が、お客様と共有出来たらいいなあと思う舞台です。


どうぞお楽しみください。


なお、お陰様でその日は満席と主催者にうかがいました。

誠にありがとうございます。

当日お天気だといいですね。よろしくお願いします。


ps. 若い頃、埼玉県県深谷市の渋沢栄一さんの生家で稽古をしていたのですが、その頃、地元の方に岡部の史跡に連れていっていただきました。

熊谷次郎直実とか、実盛とか能に出てくる坂東武者達の史跡が近くに今も残っていて、とっても身近に感じられたものでした。敦盛を舞うと思い出します。また旅に出たいです。





1月4日更新

今年も矢来能楽堂の新春公演から、一年がスタートしました。

喜正師シテの船弁慶。前売完売の幸先の良いスタートでした。

舞台出演こそされませんでしたが、喜之師匠が楽屋で皆を見守って下さり、何十年と変わらぬ始まりでした。

はや、稽古に舞台と、また忙しい一年が始まりますが、今年も元気に勤めたいと思います。どうぞ宜しくお願いします申し上げます。




1月2日更新

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い申し上げます。

暮から掃除や稽古をしながら、穏やかに新年を迎えました。

松飾を作ったり、稽古場の壁飾りや忠度の矢を作ったり、リラックス出来てよかったです。

一月も忠度のシテや催しも結構ありますので、しっかり勤めたいと思います。

本日は、下記放送にも出演しています。地謡に参加させていただきました。

是非ご覧下さい。

令和7年1月2日(木)

13:45 ~ 14:45

NHK教育テレビ(Eテレ)


12月17日更新
本日、都内にある学校のアリーナで、学生鑑賞能の敦盛の地頭を勤めさせていただき、これで年内の舞台は一応全て終了。
コロナ禍後、最も舞台が多い年だった気がします。また、自分のシテも含め、出演させていただいた舞台は大曲、難曲がとても多かった年でした。今年は今までになく地頭や主後見の重責も多く承り、自分の事どころではない日々が続きましたが、なんとか乗り切りましてほっとしています。
九皐会の仲間達も皆年齢が上がってきてるので、難しい演目を演じるようになりましたね。周りも当然同じように勉強するので、どっぷり能に浸かった一年でした。
来年も濃い内容の演目が目白押しです。
しっかり準備をして臨みたいと思います。
今年も応援して下さった皆様に厚く御礼申し上げます。

流行のビデオブログVLOG を始めてみましたが、撮影制限の多い仕事なので、意外と気楽には撮れないのと、編集や映像のクオリティを気にすると、一人では難しかったり時間がかかったりするので、試行錯誤中です。
でも新しい事をするのは楽しいので、気長にトライしたいと思います。

さて、舞台以外の溜まりに溜まった事務雑用と勉強の宿題💦そして社中のお稽古。
今年も缶詰になりながら頑張ります。




12月16日更新
御礼九皐会
今年も無事に九皐会定例会が終わりました。
その後すぐに九州出張があり、ようやくUPです。
私は年内の催しはもうすぐ終わりですが、社中の稽古納や忘年会、来年の舞台稽古など、年の瀬まで走り回りそうです。
このビデオブログも、来年は少し内容を入れたり出来ればと思っています。
YouTubeの方々の撮影編集、大人の事情などの大変さがわかってきましたが、何かできれば楽しいかなと思っています。
引き続きよろしくお願いします。
(動画が再生できない時は、ブラウザーの更新マーク丸い矢印を押してみてください )









12月2日更新
vlog告知

今年もはや師走。このところ大曲続きで、体がぎしぎししております。
年内、九皐会定例など、学校公演を含め続きますが、
令和七年新年の告知をさせていただきます。
鎌倉能舞台さんで、「忠度 ただのり」勤めます。

ここの会場は大きくはないのですが。字幕も演能中に、横の大画面に出て、開演前の解説もあり、舞台を囲むような椅子席で、最前列は、本当に舞台に手が届く目の前。
演者に最も近い能舞台だと思います。
能楽堂とは違う雰囲気の能舞台です。

長谷寺や、鎌倉大仏、鎌倉文学館も近いので、観光とセットで来ると一日楽しいです。
新宿から新宿湘南ラインに乗ると、60分で鎌倉駅。
東京駅から横須賀線でも60分。
湘南新宿ラインは、行きも帰りも、最前方車両が比較的空いてます。


鎌倉駅からは、江ノ電に乗るのも楽しいです。
江ノ電3駅目の長谷駅から徒歩7分です。

鎌倉駅からタクシーで直接舞台まで千円ほど(江ノ電側の小さい改札口前から乗るとよいです)。

鎌倉駅から徒歩で30分位。トレーニングを兼ねて歩く演者もいます。

北鎌倉や鶴岡八幡散歩とセットも楽しいです。

是非、一度お越し下さいませ。

一月鎌倉能舞台公演チラシ

チケットのお求めは、鎌倉能舞台さんまでお願いします。
よろしくお願いします。














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