アーカイブページです。過去記事はこちらからどうぞ。 2025年 11月1日。 日付変わって一昨日。はじめての矢来能楽堂という公演で、安達原白頭のシテで出演致しました。 ご来場誠にありがとうございました。 当日も詳しい解説がありましたが、振り返りまして書いておきます。 安達原は、昔話の鬼婆が登場する、とてもわりやすいストーリーで、比較的上演頻度の高い演目です。私も能楽堂をはじめ、劇場公演や学校公演で何度かさせていただいておりますが、後場の白頭の演出は、今回初めてさせていただきました。 能では、白頭は特殊演出で位が重く、通常は前場の女は中年の女性で演じ、後場も黒髪で演じるのが標準スタイルです。 今回はスペシャルということで、白頭で上演させていただきました。 白になると面装束も変わり、より昔話の 老婆のイメージに近くなります。 他にも後場を黒頭にしたり様々な演出が相伝されています。 安達原は、能の古典台本を原文を見ずに音で聴くと、現代では聞き慣れない音の言葉なので、あまり怖くないというか、ピンときませんが、この安達原の女は、まさに大量殺人鬼で、その寝室には恐ろしいその殺戮の証拠が、軒の高さまで積み上がっていると、後半の阿闍梨の言葉で語られます。(現代語に直すと生々しくてかなり怖いです) 実写ならばとても描けないよな恐ろしい映像になりますが、そこは能の省略演出の良さが幸いしています。 これ、作られた当時、きっとホラー&サスペンスの怪奇物語で、かなりセンセーショナルな能台本だったに違いありません。 能の台本では、女が、何故そのような人生を送るようになったか、その過去は全く語られないのですが、安達原の鬼婆の伝説は、古来より世に知られた話で、観客もそれを知っているのを前提に作られていると思います。(二本松市 鬼婆伝説で検索下さい) 能では、女はその罪の重さに耐えかね、救いを求めているように感じられる独白や、細い麻糸を巻く作業の中のセリフや所作の細かなところに、狂気と裏腹な危うげで切ない人生を読み取ることが出来ます。 また、その糸巻きの労働歌として歌われるロンギといわれる地謡との掛け合いの謡いには、この女が都の出身を思わせるような歌詞が混じり、都の匂いを感じ取ることが出来ます。 物語の舞台となった福島県の二本松市には、現在も「いわて」という鬼婆の伝説と昔話が...